最近読んだ本。大英博物館の目玉の展示物でもあるギリシャのパルテノン神殿のレリーフを巡った「歴史的遺物は本来の土地にあるべきか?」を問うた作品。
美術品をテーマにしたノンフィクションというのは珍しいのだが、単純に美術的遺産の遍歴だけが綴られているものと違い、歴史問題にまで踏み込んだ興味深い部分がたくさんある。
日本にも色々と歴史問題は抱えているが、ここ100年のお話が多い。だが、これは古代ギリシャ時代の建造物であり、1800年代にエルギン伯爵により剥ぎ取られてイギリスに持ち帰られた。
これを、ギリシャ側は「ギリシャの物を返して欲しい」と言っており、イギリス(というか大英博物館)側は「複数の理由により返す事が出来ない」と言っている。
大英博物館側の言い分
大英博物館側の言い分としては大雑把に纏めると以下のようになるかと思う。
- 当時ギリシャを支配していたオスマン帝国の勅旨を貰って持ち帰ったので、イギリスの物である。
- 高い保存技術を持ち合わせた博物館で保存されている方が良い。
- 大英博物館は無料で閲覧できる博物館であり(一部は有料)、美術品であり歴史的遺物を一般の閲覧に公開するという使命を果たしている。
ギリシャ側の言い分
それに対してのギリシャ側の言い分は以下のような感じになると思う。
- 勅旨は信憑性が低い(確実ではないが反証も発見されている)。
- 新しく、ギリシャ側でも保存するための施設を作るので保存状態も保全される。
- 大英博物館はレリーフの洗浄方法を誤っていた事もあるのに保存状態が良いとは言えない。
- 大英博物館のレリーフとギリシャにあるものを二つ合わせる事で更に美術的にも歴史的にも価値のある展示が出来る。
ま、他にも色々ありましたが、中心としては上記のような感じだと思います。3は、簡単にいうと大英博物館がレリーフの洗浄をかなり適当に行ったために本来の姿とは違うものとはなってしまったとする事件。これは大英博物館側も謝罪を行っているらしい。
どっちが正しいとは言わないが
これは難しい問題だ。過去に略奪を行って博物館入りしているような物など他の国も多々あるだろう。それを全て元の国に返すとなると難しいと想像に難くない。
ただ、大英博物館の言い分はイギリス側でも返還運動が起きているのが分かるように、かなり説得力が無くなりつつある。
まず、保存技術の差は自らの保存のスキャンダルがあった事があり、これは意味が無いものとなった。また、世界全体として閲覧者に還元をしているというのであれば、ギリシャで置いてあろうが、イギリスにおいてあろうが関係ないという事になってしまう。
これから、パルテノン神殿のレリーフがどのような運命になるのかは分からないが、今後の展開次第では世界の歴史的遺物の大移動が起こるかもしれない。
ちょっと思ったのは
日本はそういうところは非常に寛容な雰囲気が多いのかもしれないな。と思った。例えば大英博物館に日本の歴史的遺物があったとしても「おお、そんな権威のある博物館に日本の物が展示されているのは非常に光栄な事だ」と思う方が多いように思う。



